この照らす日月の下は……
27
その夜のことだ。カガリが『キラと話をしてみたい』と言い出したらしい。
「どうする? 断っても良いぞ」
ミナはそう言ってくる。
「……でも、お話ししないとどんな人かわからないし……」
その人間がどのような人物かを知らなければ友達になれるかどうかわからない、とキラは言外に告げた。
「確かにそうだの」
キラの言葉にミナが微笑みながらうなずいてみせる。
「本当にお前はいい子だ」
さらに彼女はこう続けた。
「とは言っても、カリダどのに頼まれている以上、お前と一対一で会わせるわけにはいかんな。かといって、ギナでは万が一の対処が怪しいか」
かといてカナードは論題だし、ラウは忙しい。ミナは周囲の者達の名を上げてあれこれと考え始めている。
「私が同席できればいいが、それも難しい。こうなれば、あれしかいないか」
別の意味で不安だが、と彼女はため息をついた。
「ムウさん?」
「消去法だがな」
全く、もう少しまじめにあれこれと取り組んでくれればいいものを。口の中だけでそうつぶやく。
「まぁ、いい。その分、ラウがきまじめすぎるくらいきまじめだからな」
そのあたりのバランスがとれていると考えればいいのか。そう続ける。
「ともかく、だ。夕食の後ぐらいに時間をとる。それまではカナードと一緒におれ」
ちょっと騒がしくなりそうだから、とミナはさりげなく付け加えた。つまり、何か厄介ごとが起きそうだと考えているのだろう。
「わかりました」
キラはそう言ってうなずく。
「何。一両日中には静かになろうて」
そう言うとミナはキラの頬に手を添える。
「そうなったら、今度は皆で宇宙に出てみよう。お前も体験しておいて良い時期だ」
あれはあれで楽しいぞ。そう言う彼女にキラは微笑んで見せた。
夕食後、居住区の談話室にカガリが姿を見せた。
「……ずいぶんと手間がかかったな」
キラの顔を見た瞬間、カガリはそう口にする。
「こいつはサハクの縁者だが、ここにいるわけじゃないからな」
色々と確認することがあっただけだ。ムウがそう言い返してくれた。
「お前さんが来るとわかっていたら、最初からここには連れてきてないって」
こいつは普通の家の子だからな、と彼はさらに言葉を重ねる。
「……どういう意味だ?」
「お前に対するおべっかも何も使えない。それでもかまわないのか、とウズミ様に確認する時間も必要だったって事だ」
そうなのか、とキラは目を丸くする。
「五氏族の当主の家族の方と会うのに、そんな手続きが必要なの?」
そのまま疑問をムウへとぶつけた。ひょっとして、ミナ達と会うにもそれが必要だったのかと不安になったのだ。
「ここは別だぞ。あの双子が率先してかまいたがっているからな」
だから安心しろ、と彼は教えてくれる。その言葉にキラはほっと安堵のため息をついた。
「ずるい」
不意にカガリがそう言う。
「何がだ?」
「私にもそう言う可愛い妹がほしい!」
何故、既に兄弟がいるサハクの二人のところばかりにたくさんいるんだ、と彼女は続ける。
「本土だとうるさい奴らがいるからな」
即座にムウはそう吐き捨てるように言った。
「まぁ、お前さんとキラが仲良く出来るようなら、メールぐらいは交換してもいいんじゃないか? 普段こいつは月にいるし」
なぁ、キラ? とムウは確認するように声をかけてくる。
「うん。ラクスちゃんともメールを交換しているし、僕はいいよ」
でも、その前にもっとお話をしよう? とキラは続けた。
「わかった」
カガリは素直にうなずく。そんな彼女にキラは笑い返した。